指しゃぶり

さらぽんたの癖は指しゃぶり。
もっというと、左の親指をしゃぶって、
右手は頭のてっぺんの毛をいじる。
それを治そうと試みたこともありましたが、
あまり良くないことみたいです。
少し反省しました。

2006/09/14, 日本経済新聞

 指をしゃぶる。つめをかむ。子どもには色々なくせがある。たいていは自然に“卒業”するが、親が口や手を出さずに放っておくことが大切だという。ところが最近の子育て事情は、最短距離で「いい子」を育てるムードが強い感もある。子どもをうまく放っておくのも努力を要するようだ。
(略)
 くせは本人にやっている意識がなく、指摘されて初めて気づくもの。言われてやめられるならくせではない、ともいわれる。子どもに多いのは指しゃぶりやつめかみ、耳を触る、性器を触る、へそをいじる、鼻に指を入れる、髪の毛を抜く――などだ。
 「人間にはいろんなくせがある。異常や病気と考えないで」と話すのは、東京・渋谷で五十年近く小児科を開業し「たぬき先生」と親しまれる毛利子来(たねき)医師(77)。くせは生物として当然の体の動きで、不安や緊張、寂しさなどを解消する働きがある。大人の場合も貧乏揺すりや髪に手をやるなど「なくて七癖」は同じ。それなのに、子どもの場合は親が「やめなさい」と注意しがちだ。

 親が気にするきっかけの一つが、幼稚園や小学校など集団生活に入るときだ。世間の目が気になることもあり、子ども自身は何とも思っていないが、親が「恥ずかしい」とやめさせたくなる。指しゃぶりをしないようにばんそうこうを張ったり、手袋をはめさせたりする親もいる。
 確かに原因が病気である場合もある。代表的なのが、まばたきや口をゆがめる、肩を小刻みに揺らす、声を発するなど「チック」と呼ばれる動きや音声のくせ。軽いものなら一過性で消失するが、一年以上の慢性的なものは「トゥレット症候群」と呼ばれ、薬で治療するケースもある。
 息子二人が同症候群である特定非営利活動法人、日本トゥレット協会(東京・中央)理事の高木洋子さんは「育て方が原因と言われることがあるが、神経疾患の一つだ」と話す。治療を視野に親が目を行き届かせる必要もあるだろう。
 こうした病気でない限り、本来、子どものくせを親が心配する必要はない。熱やだるさ、痛みなどの症状がなく、くせだけならば「放っておいて」と毛利医師はアドバイスしている。世間体からやめさせられたら子どもはいい迷惑で、「子どもの恥をしのぶのが親の務め」と若い親に話をすることもあるそうだ。

 一口に世間体を気にするといっても、親の心情は様々だ。
 ある小学生の母親は、くせやおねしょなどの悩みについての親同士の相談は、幼稚園時代はできたが今はしにくいという。子どもが大きくなるにつれ「ほかの子に克服できて自分の子にできないことが気になってくる」からだ。親として落第点をつけられた思いがしてしまうという。
 しかし、くせは無理やりやめさせようとするなど、親が必要以上に干渉すると、ストレスから余計にエスカレートすることがある。子どもが自尊心を損ねたり罪悪感を覚えるなどの弊害も指摘されている。
 中学受験などで張り切る「熱血パパ」の台頭も、くせをはじめとする個性の芽を摘んでいると見る向きがある。父親の育児を後押しする雑誌ブームの一翼を担うプレジデント社の「プレジデントファミリー」編集長、鈴木勝彦さんは「自分の子育てに自信が持てず、よそのお宅はどうなっているのか比較したい読者が多い」と話す。ここでも「ほかの子にできて」という親の心情が見え隠れする。
 安田教育研究所代表の安田理さんはこう疑問を投げかける。「父親の育児は歓迎すべきだが、仕事と同様、成果にこだわるあまり、くせを含めて子どもが自分の力で育っていくプロセスを黙って見守れなくなっているのでは」